ルームランナーは、元々は拷問の道具だった

 

健康に気を使う人々の間で、様々な健康器具が人気を集めているが、その中でもルームランナーは不動の地位を築いている。

 

心臓機能を高める健康器具として、最も売れ筋の商品である。

 

しかし、このルームランナーは、もともとは健康器具として開発されたわけではない。実は、囚人に対する刑罰として使われていた足踏み式の車輪だったのだ。

 

ルームランナーは、アメリカでは「トレッドミル= treadmill」と呼ばれているが、これは「踏み車」という意味である。英和辞典にも、「かつて、囚人に踏ませた」という説明がある。

 

トレッドミルが監獄で導入されたのは、19世紀初めのイギリスからである。1865年に制定された監獄法では、16歳以上の囚人は、収監されてから最初の3か月間は、トレッドミルを強制された。

 

現代のルームランナーとは異なり、空洞の大きな円筒の外側に段が付いており、手すりに掴まった囚人が足踏みして回す仕組みだった。一度足を踏み出すと、看守の合図があるまでひたすら続けなければならなかった。監獄法が廃止されるまで、トレッドミルは囚人たちを苦しめ続けた。

 

しかし、1953年にトレッドミルは意外な復活を果たした。アメリカのクィントン社が、電動式のランニングマシンを発売したのである。形は変わっても、監獄の踏み車を参考にしたものだった。その後、多くのメーカーがルームランナーを製造し、スポーツクラブや個人宅で利用されていることは、皆さんもご存知だろう。

 

外で自由に走り回りたくても、道路は危険だったり時間が取れなかったりで難しい現代人。そのニーズにぴったり合致したのが、ルームランナーなのである。

 

平和な時代と言えるのだろうか、それとも現代人は囚人のように自由が奪われていると言えるのだろうか。